「一碧湖/静岡県」
2022年12月08日
一碧湖(いっぺきこ)は、伊豆半島東岸、静岡県伊東市にある湖で、火山の火口に水が溜まったもの。伊豆東部火山群の一つである。
一碧湖は、南東から北西に伸びた瓢箪型をしており、北西側を「大池(おおいけ)」、市道の橋を挟んで、南東側の比較的小さい面積を「沼池(ぬまいけ)と呼ぶ。大池は西側に十二連島という小島群を持つ。沼池はその名のとおり沼地または湿地帯となっており、アシなどの植物が繁茂する。沼池は水位が低いときには大部分が干上がることもある。一碧湖は、「伊豆の瞳」とも称される観光地であり、1927年(昭和2年)には「日本百景」に選定されている。昭和初期には与謝野鉄幹・晶子夫妻が当地を訪れて数多くの短歌を残した。現在ではその歌碑が湖畔に建つと共に、ヘラブナ釣りを楽しむ場として、またボート遊びやバードウォッチング、さらには春の山桜や秋の紅葉を楽しむ場としても親しまれている。以前は大池と呼ばれていた一碧湖の名は、明治時代に外相陸奥宗光の秘書官を務めた官司で漢学者の杉山三郊(1855-1945、本名・令吉)により命名されたことが1927年(昭和2年)の書簡で明らかになった。北宋の文人范仲淹(はんちゅうえん)の『岳陽桜記(がくようろうのき)』の「一節一碧萬頃(いっぺきばんけい)」から取られた。これは「上下天光、一碧萬頃」の一節で、空も湖面も光輝いて碧色(青色)が果てしなく広がっている様を表現したものである(頃は広さを表す語で1頃は100畝のこと)。命名については長年不明であったが2014年に湖畔の民家から資料が見つかり判明した。かつては堰止湖と考えられていたこともあったが、火山弾を多数含む厚い爆発角礫岩の地層があり、現在の学説では伊豆東部火山群の活動の一端として、およそ10万3500年前に起きた激しい水蒸気爆発によってできたマール(水蒸気爆発またはマグマ水蒸気爆発により形成された円形の火口)であるとする考えが一般的である。沼池側の窪地も別の爆発でできた火口で、同時期に梅木平火山、門野火山、荻火山も一直線上に形成されており、同じ岩盤の割れ目上に噴火したためと考えられている。このような火山が一直線上に並ぶ特徴は、伊豆東部火山群の他の火山でも見られるものである。約4000年前には南南西におよそ4km離れた大室山が噴火し、その溶岩流の一部が大池の西側の一部に流れ込み、十二連島を造り出した。