「ケニア山/ケニア」
2022年09月27日
ケニア山(Mount Kenya)は、ケニア中央部にそびえる同国最高峰の山である。標高は5,199 mで、タンザニアのキリマンジャロに次ぐ、アフリカ大陸第2位の高さを誇る。赤道直下に位置するにもかかわらず、山頂部には氷河を戴いている。標高の3,350メートル以上がケニア山国立公園とし世界遺産(自然遺産)に登録されている。山域には、バティアン (Batian, 5,199メートル)、ネリオン (Nelion, 5,189メートル)、ポイント・トムソン (Point Thompson, 4,955メートル)、レナナ(Lenana, 4,985メートル)などのピークが存在する。「ケニア山」は後世になってこの土地を征服したヨーロッパ人が命名したものであり、このあたりの原住民族であるキクユ人の間ではこの山を「神の山」という意味のキリニャガ(Kirinyaga)あるいはケレニャガ(Kĩrĩnyaga)と呼んでいた。これは、この山の頂上にはエンカイ(マサイ語)あるいはンガイ(キクユ語)と呼ばれる神が黄金の玉座に座っているという、キクユ人やマサイ人の言い伝えに由来する。成層火山であるケニア山が活動した時期は鮮新世(地質時代の一つで、約500万年前から約258万年前までの期間。)から更新世(地質時代の一つで、約258万年前から約1万年前までの期間。)にかけてである。当時の高さは6,000メートルに達していたが、火山活動停止後の氷河期に氷河により2度削られた。これは氷河堆石が標高3,300メートル地帯に残っていることから推定される。また北東の寄生火山も氷河に覆われたため平坦な頂上になったと考えられている。山体をつくる岩石は玄武岩、響岩、粗面岩などである。最高峰バティアンへの初登頂は1899年(明治32年)9月、イギリス人地理学者のハルフォード・マッキンダーによって果たされ、第二峰ネリオン初登頂は1929年(昭和4年)にイギリスの登山家パーシー・ウィン・ハリスとエリック・シプトンによって果たされた。人を寄せ付けない厳しい気象環境として知られ、昼間は30度を超え、夜になると厳しい寒さとなり、氷点下5度までに下がる。通常の登山ではレナナ峰の頂上でケニア山登頂となる。他のピークに登るには、高度なクライミング技術が必要となる。レナナ峰は第二次世界大戦中に3人のイタリア人によって初登頂された。彼らはイギリス軍の捕虜だったが捕虜収容所からケニア山を眺めているうちに登りたくなり、半年がかりで食料、物資を集め収容所を脱走、登頂に成功した。3人は下山後に収容所へ戻った。脱走の罰は3人とも28日の独房暮らしだった。