「冷や汁/宮崎県」
2023年11月21日
冷や汁(ひやしる、ひやじる、冷汁とも)は出汁と味噌で味を付けた、冷たい汁物料理。主に夏場に食べる。宮崎県、埼玉県、山形県など日 本各地の郷土料理であるとともに、同名でそれぞれ別内容の料理や、別名ではあるが類似している料理が存在する。古くは鎌倉時代の『鎌 倉管領家記録』に「冷汁」の記述が見られる。このような「冷汁」と称される、味噌を調味料とした料理が僧侶等によって全国に流布され、 以後、気候風土が適した地域のみに残ったとされる。
『武家にては飯に汁かけ参らせ候、 僧侶にては冷汁をかけ参らせ候』―鎌倉管領家記録
「鎌倉管領家記録』については「国書総目録」(古代から1867年(慶応 3 年)までの間に日本人により著述・編纂・翻訳された書籍 の所蔵先をまとめた岩波書店発行の目録。全 8 巻、索引 1 巻。)に記載がないため実在に疑問があり上記の信憑性については注意が必要。
江戸時代、1643年(寛永 20 年)の料理書『料理物語』では「汁の部」において「冷汁」が紹介されている。これは具としてモズク、
海苔、クリ、ショウガ、ミョウガ、蒲鉾、アサツキなどを入れたもので、煮貫(にぬき)で仕立てた一種の味噌汁であった。現在「冷や 汁」と呼称される料理の中では、宮崎県の冷や汁が『鎌倉管領家記録』の冷や汁に一番近いものとされる。元々は「農民食」「陣中食」と 呼称された。忙しい農家の食事として、簡単に調理でき早く食する目的の料理であったが、第二次世界大戦以降に各家庭で工夫し手間のか かる料理へと移行していった。昭和 40 年代までは宮崎平野を中心とする地域の郷土料理であり、宮崎県北地域や県西地域ではほとんど食 されていなかった。近年の食文化の拡大に伴い、県内広域で食されるようになってきていることが、各種調査の結果から判明している。一 部では「冷やし汁」と表記・呼称されることもある。冷や汁自体の具で栄養補給できるうえ、暑さで食欲が落ちる夏場に冷たい汁を冷まし た米飯・麦飯にかけることで食べやすくなる。単なる冷めた味噌汁と違って、調理に手間が掛かるが、いわゆる「味噌汁ぶっかけ飯」の一 種でもある。健康食としてのイメージも高く、夏バテ対策としても食べられている。宮崎の名物として知名度が高まるにつれて、料理店が 素材を厳選し、調理方法を工夫した冷や汁をメニューに出すようになった。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」の車内食にも採 用されたほか、宮崎空港では「冷や汁ラーメン」を出す店もある。魚はいりこやアジを使うのが一般的だが、淡白で癖の無い魚ならばどんなものでも利用できる。いりこは頭と腹わたを除き、乾煎りして用いる場合もある。日向市の細島地域では甘鯛を利用した冷や汁(別名ミ ソナマス)もある。元来家庭料理であるので宮崎県内でも地域により作り方が異なる。