「せんべい汁/青森県」
2023年04月28日
第五話 4月28日は「せんべい汁/青森県」
せんべい汁(せんべいじる)は青森県八戸市周辺で、江戸時代に生まれた、伝統的な郷土料理で、同料理専用の南部煎餅を用い、醤油味で 煮立てた汁物あるいは鍋料理。地名を入れた「八戸せんべい汁」として名物化し、域外へ PR している。せんべい汁には、南部煎餅の中で も専用に焼き上げた「かやき煎餅(おつゆ煎餅・鍋用煎餅)」を使用する。これを手で割ったものを、一般的に醤油ベース(味噌・塩ベー スもある)のニワトリや豚の出汁でごぼう、きのこ、ネギ等の具材と共に煮立てる。出汁を吸った煎餅は「すいとん」の歯ごたえを強くし たような食感となる。せんべい汁は煎餅以外の具材やだし汁が「すいとん」系と同じであるが、小麦の練り物であるすいとんの代わりに、 保存のきく煎餅を用いたものと考えられる。当地を含む東北地方太平洋北中部では、冷夏をもたらす「やませ(春から夏(6 月〜8 月)に 吹く冷たく湿った東よりの風のこと)に悩まされており、特に江戸時代の小氷期(ほぼ14世紀半ばから19世紀半ばにかけて続いた寒冷 な期間のこと)には稲作の不作対策として小麦や雑穀も栽培されてきた。その小麦の練り物を用いた「すいとん」系の鍋料理として、南部 藩(盛岡藩・八戸藩ほか)の「ひっつみ」、仙台藩・一関藩の「はっと」、「つめり」等は、家庭料理として受け継がれ、また後に名物とな っていった。一方、練った小麦粉を焼いた煎餅を用いるせんべい汁は、2002年(平成 14 年)の東北新幹線の八戸駅延伸を機に PR さ れるようになった。